トラック・バス・タクシー ── ドライバー確保のために事業者が知るべきこと
2024年4月施行の「働き方改革関連法」により、自動車運転業務の年間時間外労働上限が960時間に制限され、いわゆる「物流2024年問題」が現実のものとなりました。このまま対策を講じなければ、2030年には輸送能力の約34パーセントが不足するとの試算もあり、ドライバー確保は運送事業者にとって喫緊の経営課題です。こうした背景のもと、政府は2024年3月29日の閣議決定で、特定技能制度の対象分野に「自動車運送業」を新たに追加しました。
本ページでは、自動車運送業分野に特有の制度要件・実務手続きに絞って解説します。特定技能制度の基本(在留資格の仕組み、支援義務、届出義務など)についてはこちらをご覧ください。
自動車運送業分野は、他の特定技能分野と比較していくつかの独自の特徴を有しています。受入れを検討する事業者は、まず以下のポイントを押さえてください。
2024年3月29日の閣議決定により、特定技能制度の対象分野に追加されました。受入れ見込数は、トラック・バス・タクシーの3区分合計で5年間に最大2万4,500人と定められています。所管官庁は国土交通省および出入国在留管理庁です。
本分野はトラック・バス・タクシーの3区分で構成されます。区分ごとに業務内容、必要な免許種別、日本語要件が異なります。雇用形態は全区分で直接雇用のみ(派遣不可)です。
現時点では特定技能2号の受入れは認められていません。特定技能1号(在留期間通算5年)のみが設定されています。今後、制度拡充により2号が追加される可能性はありますが、現段階では未定です。このため、本分野での在留を通じて永住権に直結する在留資格への移行経路は用意されていません。
全区分共通で自動車運送業分野特定技能1号評価試験への合格が必要です。区分ごとの違いは以下のとおりです。
トラック区分:第一種運転免許 + 日本語能力試験N4相当以上。荷主との簡易なやり取りが中心のため、日本語要件は最も緩やかです。
タクシー・バス区分:第二種運転免許 + 日本語能力試験N3相当以上 + 新任運転者研修の修了。乗客への接遇業務があるため、より高い日本語力と追加研修が求められます。
自動車運送業分野における最大の特徴が、特定活動告示第55号に基づく準備期間制度です。他の特定技能分野では在留資格認定後ただちに就労が開始されますが、本分野では日本の運転免許を保有していない外国人材が大多数であるため、免許取得等の準備を行うための特別な在留期間が設けられています。詳細は「免許取得の流れと費用」セクションで解説します。
自動車運送業分野で特定技能外国人材を受け入れるためには、「自動車運送業分野特定技能協議会」への加入が必須です。本協議会は国土交通省が設置・運営しています。
協議会への加入にあたり、費用は無料です。加入申請に際して手数料等は発生しません。
受入機関は協議会の構成員になることが義務づけられています。加入時期の詳細は国土交通省にご確認ください。
国土交通省の所管窓口に対し、所定の申請書類を提出して加入手続きを行います。申請にあたっては、後述する「運転者職場環境良好度認証」または「安全性優良事業所認定」のいずれかを取得済みであることが前提となります。
受入企業は、以下のいずれかの認証・認定を取得していなければなりません。この要件はトラック・バス・タクシーの全区分に共通です。
(1) 運転者職場環境良好度認証制度 ── 一般財団法人日本海事協会が実施。事業所の労働環境が一定水準以上であることを証明する認証です。
(2) 安全性優良事業所認定(Gマーク) ── 全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定。安全管理体制が優れた事業所に付与される認定です。
いずれも未取得の企業は、特定技能外国人材の受入れに先立ち、まず認証・認定の取得から着手する必要があります。
バスおよびタクシー区分で外国人材を受け入れる企業には、道路運送法施行規則に基づく新任運転者研修の実施義務が課せられています。座学研修(関係法令、安全運行の基礎知識、接遇等)と路上研修(実際の営業路線または営業区域での運転実習)で構成されます。研修の実施記録は適切に保管し、監督官庁の求めに応じて提示できる状態にしておく必要があります。
法令遵守:労働基準法・最低賃金法の遵守、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の適用、法人税・消費税等の適正な申告納付が求められます。過去に重大な法令違反があった企業は、受入れが認められない場合があります。
報酬の同等性:外国人材に対する報酬は、同等の業務に従事する日本人労働者と同等以上でなければなりません。
離職・行方不明:特定技能外国人材の非自発的離職および行方不明を発生させていないことが要件です。過去に行方不明事案を生じさせた企業は、新規受入れが制限される場合があります。
特定活動告示第55号に基づく準備期間は、特定技能1号の在留資格を取得する前段階として、外国免許の切替手続き、日本語研修、第二種運転免許の取得、新任運転者研修の受講を日本国内で行うために設けられた制度です。
トラック区分の準備期間は最大6か月です。来日後、外国免許切替により普通自動車免許(車両総重量3.5トン以下)を取得し、特定技能1号へ在留資格を変更して普通トラックでの乗務を開始します。その後、普通免許取得から1年経過後に準中型免許(7.5トン以下)、さらに段階的に中型・大型免許へと進むことが可能です。
バス・タクシー区分の準備期間は最大1年です。外国免許切替で普通第一種免許を取得した後、約6か月をかけて第二種運転免許を取得し、さらに新任運転者研修(座学+路上)を修了して初めて旅客運送業務への乗務が認められます。
1. 通算在留期間に算入されない:準備期間は特定技能1号の通算在留期間(5年)には含まれません。最大1年の準備期間を経ても、その後5年間のフル期間が確保されます。
2. 準備期間中も就労・給与あり:免許取得活動のほか、車両清掃、車両点検補助、倉庫内作業等に従事でき、給与が支払われます。外国人材は経済的に自立した生活を営むことが可能です。
3. 期間の更新は不可:定められた期間内に免許を取得できなかった場合、在留資格の継続が困難となります。受入企業は計画的な免許取得スケジュールを策定する必要があります。
4. 免許取得後は速やかに資格変更:免許取得が完了した場合、残期間があっても速やかに特定技能1号への在留資格変更申請を行わなければなりません。
外国人材が日本で上位免許を取得する際の費用は、教習所や地域により異なりますが、おおむね以下のとおりです。
| 免許種別 | 教習費用の目安 | 取得期間の目安 |
|---|---|---|
| 準中型免許(7.5t以下) | 30万円 - 40万円 | 1 - 2か月 |
| 大型免許(中型免許保有前提) | 25万円 - 35万円 | 2 - 3週間 |
| 第二種免許(バス・タクシー) | 教習費+新任研修費 | 約6か月 |
費用負担の方法(本人負担・企業負担・折半等)については、雇用契約締結時に書面で明確にしておくことが不可欠です。
母国で大型免許を保有していても、日本における外国免許切替は普通自動車免許からとなります。また、スリランカの国際免許はジュネーブ条約に基づく国際運転免許証として認められないため、日本国内での就労目的の運転には使用できません。
海外で技能試験および日本語試験に合格した候補者のなかから、母国での運転経験や適性を考慮して採用候補を選定します。オンライン面接や現地面接を実施し、運転に対する意欲、日本での就労に対する理解度、日本語コミュニケーション能力などを総合的に評価します。
候補者との間で雇用契約を締結し、1号特定技能外国人支援計画を策定したうえで、在留資格認定証明書の交付申請を行います。特定活動(準備期間)を利用する場合は、特定活動に係る在留資格認定証明書の申請を先行して行う場合もあります。
来日後、生活オリエンテーション、住居の確保、銀行口座の開設等の生活基盤を整備しつつ、外国免許切替の手続きに着手します。
外国免許切替を完了し、トラック区分では普通免許での乗務を開始します。バス・タクシー区分では引き続き第二種免許の取得および新任運転者研修を進めます。計画的に進行すれば、トラック区分では来日後半年以内にドライバーとしての稼働が可能です。
| トラック | バス | タクシー | |
|---|---|---|---|
| 業務内容 | (1)運行 (2)荷役 | (1)運行 (2)接遇 | (1)運行 (2)接遇 |
| 必要免許 | 第一種 | 第二種 | 第二種 |
| 日本語要件 | N4 | N3 | N3 |
| 新任運転者研修 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 事業者要件 | 運転者職場環境良好度認証 or 安全性優良事業所 | 運転者職場環境良好度認証 or 安全性優良事業所 | 運転者職場環境良好度認証 or 安全性優良事業所 |
| 特定活動期間 | 最大6月 | 最大1年 | 最大1年 |
| 稼働までの目安 | 来日後 約6か月 | 来日後 約1年 | 来日後 約1年 |
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