1. はじめに
建設業界では、就業者の高齢化(55歳以上が約36%、29歳以下は約12%)が進行し、今後10年で熟練技能者の大量退職が見込まれています。若年入職者の確保も年々厳しさを増すなか、特定技能制度を活用した外国人材の受入れは、建設事業者にとって人材確保の重要な選択肢となっています。
本ページでは、建設分野に特有の受入手続き ── CCUS登録、JAC加入、国土交通省への受入計画認定など ── を中心に、建設事業者が押さえるべきポイントを体系的に解説します。特定技能制度の基本についてはこちらをご覧ください。
2. 建設分野の特徴
特定技能制度は16分野で運用されていますが、建設分野には他の分野にない固有のルールが複数存在します。
2-1. 業務区分:3分野に大くくり化
建設分野の業務区分は、従来の個別職種ベースから土木・建築・ライフライン設備の3つの大区分に整理されました。同一区分内であれば柔軟に業務に従事させることが可能です。
2-2. 特定技能2号あり
建設分野は特定技能2号の対象分野です。2号では工程管理・複数技能者の指導を担当し、在留期間の上限なし・家族帯同が可能になります。
| 項目 | 特定技能 1号 | 特定技能 2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 通算5年(上限) | 上限なし(更新可能) |
| 技能水準 | 1号評価試験 or 技能検定3級 (技能実習2号修了者は免除) |
2号評価試験 or 技能検定1級等 +班長としての実務経験 |
| 家族帯同 | 原則不可 | 配偶者・子の帯同が可能 |
2-3. 国土交通省への受入計画認定が必要
出入国在留管理庁への在留資格申請に先立ち、国土交通省への建設特定技能受入計画の認定申請が必要です。この二重の行政手続きが、建設分野の受入フローを他分野よりも複雑にしている最大の要因です。
2-4. 直接雇用の原則
建設分野では派遣形態での受入れは一切認められていません。受入企業と外国人材の間で直接雇用契約を締結することが義務づけられています。
3. 受入までの流れ(STEP 0〜7)
建設分野の受入れでは、CCUS登録・JAC加入・国交省認定申請など他分野にはない固有の手続きがあります。以下、各STEPを時系列に沿って解説します。
STEP 0:建設業許可・社会保険の確認
前提条件の確認
建設業法に基づく建設業許可の取得が必須条件です。許可の種類(一般/特定)と業種区分(29業種)を確認し、外国人材が従事する業務に対応した許可を保有しているか確認します。
併せて、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の適正加入を確認します。建設業退職金共済(建退共)への加入も求められます。
STEP 1:CCUS事業者登録
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、建設技能者の就業履歴・保有資格・社会保険加入状況等を業界横断的に蓄積・管理する官民一体のシステムです。特定技能外国人の受入れにあたっては、事業者登録と技能者登録の両方が必要です。
事業者登録の手順
CCUS公式サイトにアクセスし、事業者情報を入力して登録申請を行います。登録料は資本金の額に応じて段階的に設定されています。
| 資本金 | 登録料(5年間有効) |
|---|---|
| 500万円未満 | 10,000円 |
| 500万円以上1,000万円未満 | 20,000円 |
| 1,000万円以上2,000万円未満 | 50,000円 |
| 2,000万円以上(段階的に上昇) | 100,000円〜2,000,000円 |
加えて、管理者IDの利用料として年間11,400円が発生します。
STEP 2:JAC加入
一般社団法人建設技能人材機構(JAC)は、国土交通省から「特定技能外国人受入事業実施法人」として登録を受けた業界団体です。技能評価試験の実施、巡回訪問指導、外国人材の転職支援等を担っており、特定技能外国人を受け入れる全ての建設企業にJAC加入が義務づけられています。
方法A:JAC正会員として直接加入
JACに直接加入する方法です。年会費は240,000円です。
方法B:正会員団体(建設業者団体)経由で加入
全国建設業協会(全建)などのJAC正会員団体を経由して加入する方法です。年会費は84,000円です。費用面を考慮すると、多くの中小建設企業にとってはこちらが経済的であり、弊社としても推奨しています。
| 項目 | 費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 年会費(正会員団体経由) | 84,000円/年 | 多くの中小企業向け・推奨 |
| 年会費(直接加入) | 240,000円/年 | JAC正会員として直接加入 |
| 受入負担金 | 12,500円/月・人 | 外国人1人あたり毎月発生 |
加入申込書・建設業許可証の写し・会社概要等を準備し、JACまたは正会員団体に提出します。審査を経て加入承認・年会費納付で完了です。手続きには通常2週間から1ヶ月程度を要しますので、早めの着手をお勧めします。
STEP 3:内定・雇用契約の締結
雇用契約のポイント
候補者の選定と面接を経て内定を出し、正式な雇用契約を締結します。建設分野では月給制による報酬の支払いが原則とされており、同等の技能を有する日本人従業員と同等以上の報酬を設定しなければなりません。雇用契約書は日本語版に加え、外国人本人が理解できる言語による翻訳版を作成する必要があります。
なお、建設業務については職業安定法により有料職業紹介が原則禁止されているため、人材の確保はJACを通じたマッチングや企業による直接募集が基本となります。
STEP 4:国土交通省申請 PHASE 1
企業体制の審査
建設分野に固有の手続きとして、国土交通省への建設特定技能受入計画の認定申請があります。PHASE 1では主に受入企業の体制に関する書類を提出します。
主な提出書類:就業規則、36協定届の写し、ハローワーク求人票の写し(国内人材確保の努力を示すため)、既存従業員の賃金台帳(報酬比較のため)、建設業許可証の写し、事業計画書など。
書類に不備がなければ、通常2週間から4週間程度で審査が完了します。
STEP 5:国土交通省申請 PHASE 2 + CCUS技能者登録
外国人本人情報の審査
PHASE 1通過後、外国人本人に関する追加書類を提出します。主な提出書類は、外国人のCCUS技能者IDの確認書類、企業のJAC加入証明書類、法人の登記簿謄本、雇用条件書(翻訳版付き)、建設特定技能受入計画書などです。
この段階までに外国人本人のCCUS技能者登録(顔写真、在留カード情報、保有資格等を入力)を完了しておく必要があります。PHASE 2の審査を経て国土交通省の認定が下りると、次の在留資格申請に進めます。
STEP 6:在留資格申請(出入国在留管理庁)
入管への申請
国土交通省の受入計画認定を取得後、出入国在留管理庁に対して在留資格の申請を行います。海外から呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」(審査期間:1〜3ヶ月)、国内在住者の場合は「在留資格変更許可申請」(審査期間:2週間〜1ヶ月、収入印紙4,000円)です。
STEP 7:入社・就労開始
就労開始後の手続き
在留資格が許可され、海外からの入国者はビザ取得のうえ渡航・入社となります。入社後は登録支援機関による支援計画に基づく各種支援が開始されます。
なお、建設分野特定技能協議会への加入は在留資格の申請前に完了していることが必須です(2024年6月15日以降)。加入はJAC(建設技能人材機構)を通じた間接加入となり、STEP 6の在留資格申請より前に済ませておく必要があります。
4. 業務範囲 ── 3区分の概要
建設分野の特定技能における業務区分は、土木、建築、ライフライン・設備の3つの大区分に整理されています。同一区分内であれば柔軟に業務に従事させることが可能です。
(1)土木
道路・橋梁・ダム・トンネル・河川・港湾等の社会インフラの建設・維持管理に関わる業務です。主な職種として、型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、土工、鉄筋施工、海洋土木工、建設機械施工、解体工事施工、鉄骨組立てなどが含まれます。
(2)建築
住宅・ビル・商業施設等の建築物の新築・増改築・修繕に関わる業務です。主な職種として、大工、内装仕上げ施工、建築板金、とび、鉄筋施工、型枠施工、左官、屋根ふき、コンクリート圧送、塗装、タイル張り、防水施工、解体工事施工などが含まれます。
(3)ライフライン・設備
建築物や都市インフラの機能を支える各種設備の施工・保守に関する業務です。主な職種として、電気通信、配管、保温保冷、冷凍空気調和機器施工、建築板金、プラント配管、機械器具設置、エレベーター設置などが含まれます。
5. 受入企業の要件
建設分野では、共通の特定技能受入れ要件に加えて、以下の建設特有の要件を継続的に満たす必要があります。
5-1. 同等報酬の確保
特定技能外国人に対しては、同等の技能を有し同一の業務に従事する日本人従業員と同等以上の報酬を支払うことが求められます。国土交通省の受入計画認定審査において賃金台帳等をもとに厳格に確認されます。月給制を原則とし、技能の習熟に応じた昇給の仕組みが整備されていることも求められます。
5-2. 安全衛生の確保
建設現場は労働災害のリスクが高い環境です。特定技能外国人に対して母国語を含む理解しやすい言語で安全衛生教育を実施し、保護具の支給・着用指導、危険予知活動(KY活動)への参加促進など、安全管理体制を徹底する必要があります。労働安全衛生法に基づく特別教育も適時に実施しなければなりません。
5-3. 受入人数の上限
建設分野では、1号特定技能外国人の受入人数に上限があります。1号特定技能外国人の数が、常勤職員(技能実習生・1号特定技能外国人を除く)の総数を超えてはなりません。適切な指導・管理体制を確保するための規定です。