1. はじめに

日本の介護業界は、少子高齢化の進展により深刻な人手不足に直面している。厚生労働省の推計によれば、2040年度には約69万人の介護人材が不足するとされ、国内の労働力だけでは到底まかないきれない状況が現実味を帯びている。こうした背景のもと、特定技能制度を活用した外国人介護人材の受け入れが、人材確保の有効な選択肢として注目を集めている。

本ページでは、介護事業者が特定技能外国人を受け入れるにあたって知っておくべき介護分野固有の情報に絞って解説する。特定技能制度の基本的な仕組み(在留資格の概要、1号・2号の違い、支援義務の詳細など)については特定技能制度の共通ガイドをご覧いただきたい。

2. 介護分野の特徴

特定技能16分野のなかでも、介護分野には他の分野にはない固有の特徴がいくつかある。受入れを検討する事業者は、まずこれらのポイントを押さえておく必要がある。

(1)特定技能2号がない ── 在留資格「介護」への移行ルート

他の特定技能分野では「特定技能2号」への移行が認められている分野もあるが、介護分野には特定技能2号が存在しない。これは、介護福祉士の国家資格に基づく在留資格「介護」という長期就労の受け皿がすでに用意されているためである。制度設計上、特定技能1号(通算5年)の在留期間中に実務経験3年以上を積み、実務者研修(450時間)を修了したうえで介護福祉士国家試験に合格し、在留資格「介護」へ移行するルートが想定されている。在留資格「介護」は在留期間の上限がなく、家族帯同(配偶者・子)も可能であるため、実質的に特定技能2号以上の待遇を得ることができる。受入企業としては、この5年間のうちに外国人材が介護福祉士の国家試験に合格できるよう、実務者研修の受講支援や国試対策の学習機会を計画的に提供することが極めて重要となる。

(2)訪問介護の解禁(2025年4月)

2025年4月の制度改正により、特定技能外国人の訪問介護サービスへの従事が解禁された。対象となるサービスは、訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護である。在宅介護サービスの深刻な人材不足を背景に、介護業界からの強い要望を受けて実現した。ただし、訪問系サービスは利用者の居宅で一対一の支援を行う性質上、受入機関には以下の5つの遵守事項が課されている。

(3)対象施設の3区分

特定技能「介護」で外国人材を受け入れることができる施設は、大きく3つのカテゴリに分類される。

区分 概要 主な施設例
原則対象施設 介護保険法・障害者総合支援法等に基づく指定を受けた事業所。追加条件なしで受入可能 特養、老健、介護医療院、グループホーム、デイサービス、デイケア、ショートステイ、障害者支援施設、児童発達支援 等
条件付き対象施設 一定の要件(特定施設入居者生活介護の指定等)を満たすことで受入可能 有料老人ホーム、ケアハウス、サ高住、障害者グループホーム(外部サービス利用型を除く)
訪問系サービス
(2025年4月〜)
上記5つの遵守事項を満たすことで受入可能 訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回随時対応型、居宅介護、重度訪問介護 等
注意:条件付き施設での受入れを検討する場合は、事前に「特定施設入居者生活介護」の指定取得状況を確認すること。未指定の場合は受入不可となる。

(4)人員配置基準の算定対象

特定技能外国人は、介護報酬上の人員配置基準の算定対象として即座にカウントできる。技能実習生の場合は受入れ人数に上限が設けられるケースが多いが、特定技能外国人は事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を上限として柔軟に受け入れることが可能であり、人員不足による新規利用者の受入れ停止やサービス縮小を回避できる。

3. 協議会への加入

介護分野で特定技能外国人を受け入れるすべての事業者は、分野別の協議会に加入する義務がある。未加入の場合は受入れが認められなくなるため、速やかな手続きが求められる。

項目 内容
正式名称 介護分野における特定技能協議会
設置・運営 厚生労働省
加入費用 無料
加入時期 在留資格の申請前に協議会への加入を完了していることが必須(2024年6月15日以降)。なお、外国人の受入れ後4ヶ月以内に協議会への外国人情報の登録が別途必要。
加入方法 厚生労働省の特定技能総合支援サイトからオンラインで申請。必要書類として、特定技能外国人の在留カードの写し、雇用契約書の写し、受入機関の概要書等を提出する
構成員の義務 ・厚生労働省からの情報提供・報告徴収への協力
・特定技能外国人の受入状況に関する情報共有
・制度の適正な運用への協力
・必要に応じた現地調査等への対応
重要:2024年6月15日以降、協議会への加入は在留資格の申請前に完了していることが必須です。受入れを検討する段階で速やかに手続きを開始してください。なお、加入後は外国人の入社から4ヶ月以内に外国人情報の登録を行う必要があります。2人目以降の受入れの場合、再度の加入手続きは不要ですが、受入状況の変更届出は必要です。

4. 業務範囲

特定技能「介護」で従事可能な業務は、介護保険法に基づくサービス提供に関連する業務であり、日本人の介護職員と同様の業務内容に従事することができる。主な業務カテゴリは以下のとおりである。

(1)身体介護

利用者の身体に直接触れて行う介助業務であり、介護サービスの中核をなす。入浴介助、食事介助、排泄介助、移乗介助、体位変換、歩行介助、更衣介助、口腔ケア、服薬介助補助が含まれる。

(2)生活援助

利用者の日常生活を支えるための間接的な支援業務である。居室の掃除、洗濯・衣類整理、買い物代行、ベッドメイキング、調理補助(食材の下準備・配膳・下膳)などが含まれる。

(3)機能訓練・レクリエーション

理学療法士や作業療法士の訓練計画に基づく機能訓練の補助、体操・ゲーム・手工芸・音楽活動などのレクリエーション活動の企画・実施、外出・散歩の付添い業務が含まれる。

(4)訪問介護(2025年4月解禁)

訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が対象。前述の5つの遵守事項を満たした事業所に限り従事可能である。

(5)記録・連携業務

日々の介護記録(バイタルサイン・食事摂取量・排泄状況等)の作成、申し送り・引き継ぎ、看護師やケアマネジャーとの情報共有、ケアカンファレンスへの参加が含まれる。

(6)関連業務

事業所内の清掃・備品整理、送迎業務(乗降介助・車内での見守り)、見守り・声掛けなどの付随業務。ただし、関連業務のみに従事させることは認められず、身体介護等の主たる業務に付随する形で行うことが前提である。

5. 受け入れまでの流れ

特定技能外国人の採用プロセスは、以下のステップで進行する。

STEP 内容 ポイント・所要期間
1 対象施設の要件確認
自施設が受入対象に該当するか、指定通知書等の書類を確認する
条件付き施設の場合は、特定施設入居者生活介護の指定有無を事前確認
2 人材募集・選考
求人条件を整理し、人材紹介会社や海外の送出機関を通じて候補者を募集。面接で技能・人柄・日本語力を評価
オンライン面接も可。海外在住者と国内在住者で準備期間が異なる
3 内定・雇用契約
雇用契約書を締結し、配属先事業所を確定
日本人と同等以上の報酬が必須。直接雇用・フルタイムが原則
4 支援計画の策定
1号特定技能外国人支援計画を作成。10項目の義務的支援の実施方法を記載
自社対応が難しい場合は登録支援機関に委託可能
5 在留資格申請
海外在住者:在留資格認定証明書交付申請
国内在住者:在留資格変更許可申請
国内:約1〜2ヶ月
海外:認定証明書に約1〜3ヶ月+ビザ発給・渡航に1〜2ヶ月
6 入国・入社
来日後の住居確保・生活立上げ支援、生活オリエンテーション(8時間以上)を実施
住民登録、銀行口座開設、社会保険手続き等の同行支援も義務
7 協議会への加入
在留資格の申請前に介護分野における特定技能協議会への加入を完了
加入費用は無料。申請前の加入が必須のため、早期に手続きを開始
8 就労開始・定期届出
業務開始後、四半期ごとの定期届出、定期面談等を継続的に実施
介護福祉士国家試験の合格支援を見据えた育成計画の策定を推奨
所要期間の目安:採用活動開始から入社まで、国内在住者で約1.5〜3ヶ月、海外在住者で約3〜5ヶ月。ボトルネックになりやすいのは、対象施設要件の確認(指定通知書の準備)、試験合格証明書の確保、企業側・本人側双方の必要書類の収集であり、早い段階から計画的に準備を進めることが所要期間の短縮につながる。

6. 受入企業の要件

特定技能外国人を受け入れる介護事業者には、共通要件に加えて介護分野固有の要件が課されている。ここでは介護分野特有のポイントに絞って解説する。共通要件(報酬の同等性、社会保険加入、法令違反の不存在等)については特定技能制度の共通ガイドを参照されたい。

(1)介護分野における特定技能協議会への加入

前述のとおり、在留資格の申請前に厚生労働省が設置する協議会への加入を完了していることが必須である。加入費用は無料。

(2)対象施設であること

受入事業所が介護保険法等に基づく指定を受けた対象施設であることが前提条件。この確認を怠ると在留資格申請の段階で不許可となるリスクがある。

(3)受入人数の上限

事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が受入人数の上限となる。例えば、日本人等の常勤介護職員が20名の事業所であれば、最大20名の特定技能外国人を受け入れることが可能である。

(4)訪問系サービスの追加要件

訪問介護等の訪問系サービスで受け入れる場合は、通常の要件に加えて5つの遵守事項(キャリアアップ計画の策定、定期巡回訪問、初任者研修の受講支援、相談・苦情対応体制、ハラスメント防止措置)を満たす必要がある。

(5)外国人材の要件と採用ルート

特定技能1号(介護分野)の在留資格を取得するには、外国人本人が以下のいずれかのルートで要件を満たす必要がある。

ルート 必要な試験・条件
試験合格ルート 介護技能評価試験 合格 + 介護日本語評価試験 合格 + JLPT N4以上またはJFT-Basic 合格
介護職種の技能実習2号修了 3試験すべて免除。在留資格変更許可申請のみで移行可能
他職種の技能実習2号修了 日本語試験は免除。介護技能評価試験+介護日本語評価試験の合格が必要
EPA介護福祉士候補者 在留期間満了者は一定条件下で3試験免除

7. よくある質問

訪問介護サービスでも特定技能外国人を配置できますか?
2025年4月の制度改正により、訪問介護サービスへの配置が解禁されました。対象は訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護です。ただし、受入機関にはキャリアアップ計画の策定、定期的な巡回訪問、初任者研修の受講支援、相談・苦情対応体制の整備、ハラスメント防止措置の5つの遵守事項が課されています。具体的な準備方法についてはお気軽にご相談ください。
介護分野に特定技能2号はありますか?
介護分野には特定技能2号が設けられていません。介護福祉士の国家資格に基づく在留資格「介護」が長期就労の受け皿として別途用意されているためです。特定技能1号(通算5年)の間に実務経験3年以上を積み、実務者研修を修了して介護福祉士国家試験に合格すれば、在留資格「介護」に移行できます。在留資格「介護」は在留期間の上限がなく、家族帯同も可能です。
受入人数に上限はありますか?
事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限です。例えば常勤介護職員が20名の事業所であれば、最大20名の特定技能外国人を受け入れることが可能です。技能実習制度と比較すると柔軟な受入枠となっています。ただし、OJTや日本語学習支援の体制を維持するためにも、段階的に人数を増やしていくことが望ましいでしょう。
夜勤をさせることはできますか?
はい、日本人の介護職員と同様に夜勤に従事することが可能です。深夜割増賃金(22時〜翌5時:25%以上)の支払いが必要です。入社直後から夜勤に従事させるのではなく、日勤帯での業務に十分に慣れた段階で段階的に移行するのが望ましいとされています。
協議会への加入を忘れた場合どうなりますか?
2024年6月15日以降、協議会への加入は在留資格の申請前に完了していることが必須です。未加入の状態では申請が受理されません。加入費用は無料ですので、受入れを検討する段階で速やかに手続きを開始してください。厚生労働省の特定技能総合支援サイトからオンラインで申請が可能です。
派遣で受け入れることはできますか?
いいえ、介護分野の特定技能外国人は直接雇用のみが認められており、派遣形態での受入れはできません。直接雇用かつフルタイム勤務が原則であり、日本人の介護職員と同等以上の報酬を支払うことが義務付けられています。
費用はどのくらいかかりますか?
協議会への加入費用は無料です。在留資格申請に関する収入印紙代等の実費は発生します。人材紹介・登録支援機関への委託費用については、詳細はお問い合わせください。